世界のカブ乗りはどんな人?ベトナム、タイ、ヨーロッパ—各国で異なるスーパーカブの役割とカスタム文化

ホンダのスーパーカブは、世界160ヶ国以上で愛用されていますが、その国や地域が持つ文化、気候、経済状況によって、カブが担う役割は劇的に異なります。日本で見かけるカブは「働くバイク」または「趣味のレジャーバイク」という二極化が進んでいますが、世界には「一家の唯一の移動手段」「移動する店舗」「ファッションアイテム」など、数えきれないほどの顔を持つカブが存在します。
この多様性こそが、カブが世界一売れた理由であり、飽きられることなく愛され続ける最大の魅力です。本記事では、アジアからヨーロッパまで、スーパーカブが人々の生活と文化に深く根付いている国々を取り上げ、それぞれの地域でカブに乗る人々がどんなライフスタイルを送り、どんなユニークなカスタムを楽しんでいるのかを徹底解説します。世界のカブ文化を知ることで、あなたのカブライフはさらに豊かなものになるでしょう。
このページの目次
東南アジア—生活を支える「移動する商売道具」としてのカブ
東南アジア地域は、スーパーカブ(およびその派生モデル)の最も重要な市場です。ここではカブは単なる移動手段ではなく、人々の生活、ビジネス、家族の移動を支える「生命線」としての役割を担っています。
1-1. ベトナム:カブがバイクの代名詞となった「Honda Dream」
ベトナムでは、スーパーカブはもはやバイクの総称として使われるほど生活に浸透しています。特に1990年代に流通したモデルは「Honda Dream(ホンダ・ドリーム)」と呼ばれ、高い耐久性から現在でも高値で取引されています。ベトナムのカブ乗りは、老若男女問わず、日常のあらゆる場面でカブを使用します。
- 積載のプロフェッショナル: 驚くほどの荷物を積載することが特徴です。数人家族全員の送迎、家電製品、大量の食料品、時には生きた家畜まで、カブの荷台とフレームを駆使して運びます。
- カスタムの目的: 耐久性を高めるための強化パーツ、過積載に耐えるための強化サスペンションやキャリアの溶接などが一般的です。見た目よりも実用性を重視したカスタム文化が根付いています。
- 気候への対応: 年間を通して高温多湿なため、湿気に強い電気系統の改良や、エンジンのオーバーヒート対策も独自に行われています。
1-2. タイ:ストリートカルチャーと化した「ドリームカスタム」
タイでもスーパーカブは非常に普及していますが、ベトナムとは異なり、若者の間ではカスタムを施したカブがストリートファッションの一部となっています。タイでは「カブ」という言葉よりも、ホンダの現地向けモデル「Dream」の名称で親しまれています。
- カスタムスタイル: ローダウン、大径ホイール、鮮やかなカラーリング、そして細部まで磨き上げられたクロームメッキパーツが特徴です。見た目のクールさを追求し、日本の旧車カスタムやレーシングカスタムの影響も受けています。
- レース文化: 比較的フラットな道路が多く、カスタムカブによる非公式のストリートレース文化が存在します。これにより、エンジンチューニングや軽量化といった、本格的な性能向上を目的としたカスタムも盛んです。
- カブ乗りの属性: 都会の若者や学生が、ファッション性を高めるためにカブを選びます。移動手段としての機能に加え、自己表現のツールとしての価値が非常に高いのが特徴です。
ヨーロッパ—レトロとエコを愛する大人のライダー
ヨーロッパ市場では、カブはアジアのような「生活必需品」というより、ユニークなデザインと優れた燃費性能を持つ「レジャー・趣味の乗り物」として位置づけられています。特に2010年代以降、CT125ハンターカブやクロスカブの登場により、その人気は再燃しています。
2-1. イギリス:クラシックデザインとカフェレーサー文化
イギリスはクラシックバイク文化が根強い国です。スーパーカブは、そのレトロなデザインと歴史から、熱心なファン層を持っています。
- カスタムスタイル: クラシックなデザインを強調するカスタムが主流です。カフェレーサー風のシングルシート化、セパレートハンドルへの換装、クラシカルなカラーリングの採用など、ヴィンテージ感を追求します。
- カブ乗りの属性: 中高年のバイク愛好家や、大型バイクを持つセカンドバイクとしてカブを選ぶ人々が多いです。彼らにとってカブは、イギリスの田園風景を楽しむための、気負わない相棒です。
2-2. ヨーロッパ全域:環境意識の高いシティライダー
ヨーロッパの主要都市では、環境意識と交通渋滞への懸念から、燃費効率の高い小型モビリティの需要が高まっています。スーパーカブは、その低燃費な4ストロークエンジンとコンパクトなサイズが評価されています。
- 役割: 都市部の通勤・通学、ちょっとした買い物やレジャーなど、自動車の代わりとなるエコなシティコミューターとしての役割を担います。
- カスタムの目的: 利便性を高めるための大きなリアボックス、スマートフォンホルダー、USB電源の取り付けなど、実用性と快適性を重視したカスタムが行われます。
- カブ乗りの属性: 環境問題に関心が高い若者や、都市生活を送る人々が、スマートで経済的な移動手段としてカブを選んでいます。
アメリカ—新しい冒険とレジャーの相棒(ハンターカブの成功)
かつて「You meet the nicest people on a Honda」という広告で一世を風靡したアメリカ市場では、カブは実用車としてだけでなく、「レジャーバイク」として独自の地位を築いています。特にハンターカブ(CTシリーズ)の存在が大きいです。
3-1. CTシリーズとアウトドア・アドベンチャー文化
アメリカでは、スーパーカブの派生モデルであるハンターカブ(CT110や現行のCT125)が非常に人気です。カブが持つタフネスさと、アウトドアでの走破性を高めたデザインが、広大な自然を持つアメリカのレジャー文化に完璧にマッチしました。
- カスタムスタイル: アドベンチャーツーリング向けのカスタムが主流です。大型の燃料タンク、工具類を積むための堅牢なパニアケース、オフロード走行に対応するためのハイリフトキットやブロックタイヤへの換装などが行われます。
- カブ乗りの属性: キャンプ、釣り、狩猟といったアウトドア愛好家、そして国立公園などを巡るバイクツーリングを楽しむライダーたちです。彼らにとってカブは、大型バイクでは入れない未舗装路を走破するための、信頼できる「オフロードコミューター」なのです。
世界のカブ文化に共通する普遍的な魅力
国や文化によってカブの使われ方は全く異なりますが、これら全ての地域でカブが愛され続けるのには、共通する普遍的な魅力が存在します。
4-1. 壊れない信頼性が生む「安心感」
カブが世界中で愛される最大の理由は、その驚異的な耐久性と整備性の高さです。過酷な東南アジアの気候や道路、広大なアメリカのアウトドア環境においても、カブは簡単には壊れません。万が一故障しても、部品の入手が容易で、どんな僻地でも修理できる「安心感」が、世界中のユーザーにとって最も大きな価値となっています。
4-2. 経済的な自由と公平性
カブは非常に燃費が良く、価格も比較的手頃です。これにより、発展途上国では初めてのモビリティとして、先進国では環境に優しいセカンドバイクとして、経済的な負担を最小限に抑えて「移動の自由」を提供します。カブは、人々の所得格差を超えて、公平に移動の恩恵をもたらす乗り物なのです。
4-3. カスタム文化が生む「多様性」
シンプルで頑丈な基本構造を持つカブは、オーナーのニーズに合わせて自在に姿を変えることができます。ベトナムの積載仕様からタイのストリートカスタム、イギリスのカフェレーサーまで、カブは各地域の文化、流行、そして人々のライフスタイルを忠実に反映し、進化を続けています。この「変容する柔軟性」こそが、カブを単なる工業製品ではなく、文化的なアイコンへと押し上げた要因です。
まとめ:カブは世界をつなぐ共通言語
スーパーカブは、国境を越えて人々の生活に溶け込み、それぞれ独自の文化やカスタムを生み出してきました。ベトナムでは家族の絆を乗せ、タイでは若者のファッションを彩り、アメリカでは冒険への道を開きます。
世界のカブ乗りは、年齢、職業、地域こそ違えど、「信頼できる相棒と、自由な移動を楽しみたい」という共通の想いを抱いています。カブは、地球上で最も身近な移動手段として、人々の生活と夢を乗せて、これからも世界中の道を走り続けるでしょう。あなたのカブも、世界中で愛されているカブファミリーの一員なのです。





